2014年11月

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地中海食の主役であるオリーブオイルは、あたかも万能薬のように種々の疾患を予防します。 近年、その神秘のメカニズムがまた一つ明らかになりました。エキストラバージン・オリーブ油に含まれるオレオカンタルという物質は、非ステロイド性抗炎症薬の一種、イブプロフェンと同様の作用があると判明したのです。

 

エキストラバージン・オリーブオイルが直に喉を通ると刺激を感じるのは、このオレオカンタルを含むためです。非ステロイド性抗炎症薬は、アルツハイマー病に予防効果があることがすでに実証されています。 イブプロフェンは抗炎症、鎮痛薬として使われますが、同様な作用の仕組みを持つアスピリンは低用量で抗血小板薬として作用します。これは血小板の働きを抑え、血液が固まるのを防ぐので、心筋梗塞や脳梗塞など心血管病治療に広く使用されています。

 

一日50グラムのエキストラバージン・オリーブオイルの摂取で、オレオカンタルを約10ミリグラム摂取できます。これは鎮痛剤を使う量の10数%ですが、現在低用量のアスピリンが心血管病の再発予防のために処方されていることを考えると意味深長です。

 

オリーブオイルは何千年にも亘って、地中海周辺の人々心血管病、癌や認知症などの慢性疾患を予防してきたのです。その神秘のベールがまた一つ剥がされた素晴らしい研究発表です。オリーブオイルに関してこうした発見は今後も続くと予想されます。

 

千葉大学名誉教授
元千葉大学付属病院長
伊藤晴夫先生